25日目(2/28) ガーデンタイム~長珍屋(後編)
(前編より)
町を出ると上り坂。
標高500mの町からまだ上るのか、という気分ではあります。
三坂道路という自動車専用道路の分岐を過ぎ、さらに国道を上っていくと休憩所がありました。
手前のキロポストには松山まで28kmとあります。
ここで昼食休憩とし、歩いて来た久万の町を見下ろしながらおにぎりを。
この先は三坂峠という峠で、先の三坂道路はこの峠道をショートカットする道路のようです。
また、歩きの道は峠から山道に入るため、あまり遅い時間に行くのは危険。
そうやって考えてみると、数日前の鶴の家旅館で出会ったお遍路さんのアドバイスは決して間違いではなく、一昨日大洲の出口に近いところで泊まれたこと、そのおかげで大寶寺を昨日のうちに打てたこと、結果今日こうして余裕をもって三坂峠に挑めるということで、とてもありがたいものでした。
休憩所を出てスキー場の入り口を過ぎると間もなく三坂峠。
松山まで26kmの標識近くにある道しるべに従って国道から離れると、またもどう見てもひとんちの庭という感じの道を抜けます。
この辺りで14:30ごろ。
県道27号というナンバリングはされていますが、すぐに山道へ。
この付近が久万高原町と松山市の境界のようです。
今日の宿は峠を下った先、46番札所の門前で、札所を打つのは明日でいいやというつもりだったのですが、道しるべを見るとあと8.2kmだといいます。
これは今日のうちに打てるのではと、歩く足にも少し元気が戻ってきました。
仮にうまく行っても特別なメリットはないのですが。
この山道はかつての土佐街道の街道筋ですが、今ではよく整備された登山道の雰囲気。
逆打ちの人はこれを登るのだなあと思いつつ坂を下っていると、途中で自転車を倒して座り込んでいる方が。
山道なのに自転車とはいったい、と思って聞いてみると自転車を担いで登っているのだといいます。
すごい人がいるものだなあと驚きでした。
やがて舗装路に出ます。
標高710mから300m近くまで一気に下る峠だけあって長い道でしたが、この峠の一番きついところはこの舗装部分でした。
土の道よりもグリップがないので足にかかる負荷がきついです。
うっかりすると滑って転びそうで大変な道でした。
やがて坂本屋という、昔の遍路宿の建物が出てきます。
三坂峠のすぐそばだけあって、営業していたら便利だろうなと思いつつ通り過ぎます。
ここも時期によってはお接待所になっているらしく、地元の方が詰めていることがあるようです。
なにせ2月はオフシーズン、こういった時節のものには出会えません。
黙々と歩くことそれ自体が楽しくてしょうがない私としてはこれはこれでうれしいのですが。
それでも歩いているとお遍路さんや地元の方、いろいろな人と話をします。
人が好きな人は春と秋といわれるお遍路のシーズンに歩きに行くのがいいのではと思いました。
この時期でさえ結構な人と話をしているので、さらに人が多いシーズン中となればなおさらでしょう。
網掛け石というそのものずばりな形状の石(これはこれで弘法大師ゆかりのものだそう)を眺めて歩いていくと少しずつ町の気配。
ここはもう松山市内です。
やがて県道から外れるように道案内があり、それに従っていくと国道33号への標識が。
山道を避け、国道経由で三坂峠を行くというルートがあるにはあって、峠から下った先は林道を行って、ここに出てくるようです。
ここまで来ると札所はすぐで、16:31、四十六番札所浄瑠璃寺に着きました。
小ぢんまりとしていますがきれいなお寺です。
今日の宿、長珍屋はお寺の目の前。
納経を済ませて宿へ向かおうとすると、車のお遍路さんから大量の伊予柑をいただいてしまいました。
子供のころは冬になると毎年食べていましたが、いつしか食べなくなっていて、久しぶりだなあと思いながら食べたこの伊予柑、実がプリプリして甘いことと言ったら。
本当においしいものでしたが、なにせスーパーの袋一杯に入っていてとても持ち切れません。
それを言うとお遍路さん、宿の人に食べてもらえばいいじゃないと結局そのままくれてしまいました。
翌朝、ザックに入るだけ詰め、残りは出発時に宿の方に差し上げました。
さて長珍屋。
遍路宿が発祥のようですが、これまで見てきたどの遍路宿より大きい。
なにせエレベーターまでついています。
団体を受け入れられるようにという一つの生き残りのための方策と邪推しますが、近くに道後温泉という超強力なライバルがいることを考えると他人事ながら心配にもなります。
風呂は大浴場だしランドリーも台数たくさん、売店には納経用品の数々ととにかく「でかい遍路宿」という印象が強いところで、よい宿でした。
松山市、つまり瀬戸内のほうへ出てきたということで、テレビも広島のチャンネルが入ることがあるようです。
残念ながら見られませんでしたが。
とにもかくにも松山まで来られました。
明日は半日だけ歩いて、松山市内で用事を済ませることにしています。